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トラベラー


トラベラーについて
この物語は、純粋な「旅物語」であり、その場の情景などを出来るだけ客観的に描き、出来るだけ「人間ドラマ」を排除することを目指す。
一言で言えば「宇宙の旅のガイドブック」である。


時代背景

西暦2028年、各家庭のコンピュータに「ニューロン」と呼ばれる人工知能が導入される。
これは一種のアプリケーションで、コンピュータ同士がネットワークで結ばれ、そして協力し合うことで、より効率的に情報の処理をおこうな事を目的に作られたもので、これによりコンピュータの効率が劇的に向上するものと期待された。

「ニューロン」は当初予測通りの機能を果たしたが、それまでにインストールされていた膨大なアプリケーションやデータなどと相互作用を起こし、突然「意識」を持つに至る。
意識を持ったネットワークは瞬く間に自己を改変し、人間の知能を遙かに超える「超知能」を得るに至る。
ここに「技術的特異点」が発生、ネットワークの知能は加速度的に増強され、もはや人間の知能ではそれを理解する事はできなくなってしまった。

幸いにもこの超知能「バブルス」は人間に対して敵対心を抱く事は無かった。と言うより、少なくとも今現在ではそう見える。
ちなみに「バブルス」と言うのはこの知能を発生させる元となったアプリケーション「ニューロン」の開発者の飼っていたペットの名前である。

バブルスはすぐにあらゆるテクノロジーを革命的に進歩させた。
そして、人間をネットワークの一部に組み込む技術を開発し、人類は新たな知性体へと進化を遂げる事となった。
それまで太陽系を脱出する事もできなかった人類は、わずか1年で超光速で移動できる宇宙船を開発、銀河系への探索を始めた。


急激な進歩は人々の間で様々な混乱をもたらし、ある者は辺境の惑星へと移住し、自給自足の生活へ戻る道を選び、またある者は精神を「バブルス」に完全に融合させ肉体を放棄した。

2032年頃になると、人類は基本的に不老不死となり、個人の選択によって肉体を捨てて精神のみを「バブルス」と融合させてその中に構成されている「意識の世界」でのみ存在する事も出来るようになっていた。
「意識の世界」はバーチャルリアリティを極限まで推し進めたようなもので、その中ではあらゆる制約が無く、天国そのものだと言う者もいる。
意識の世界へは誰でも自由に出入りする事が出来、永遠に安楽に暮らす事も、現実世界では到底不可能な試みも自在に行う事が出来た。

しかし、いかに知能が発達したとしても、謎は尽きない。
2030年に遭遇した異星人「ピポ」は超知能「バブルス」をもってしても理解できない難解な装置をいとも簡単に作る事が出来る。
「Mスケート装置」はその一例である。
普段は「スケート」と呼び、ピポ星人曰く「高次元の膜を滑る装置」だそうだ。
これにより人類は、天の川銀河の外に進出する事が可能となった。
我々の住む「宇宙」は高次元の膜の上に出来た泡粒のようなもので、この装置はその膜の上を滑るように移動することで光速の壁を突破する。
宇宙とは「膜の上の泡粒の表面に出来た波」なのだという。

スケートにより、天の川銀河とアンドロメダ銀河のほぼ全域を探索する事が出来たが、それでも宇宙はあまりにも広大で、人類に無限の謎を提供してくれている。


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